●園主より●


私と皐月の初めての出会い
は、今から約32年ほど前。

当時は鉢花等を扱っていた私に、お客様から皐月の注文があり
苦労して数本を取り寄せました。

その売れ残りの木が、数ヵ月後に一輪の花をつけ
余りの美しさに驚いたのを今でも憶えています。
品種は確か
『愛国』で、その花色はホワイトメタリックとでもいうか
キラキラ光ったような白でした。

その美しさといったら・・・

しかし感動も束の間、経済の高度成長とバブルの影響により皐月の世界でも
『曲付け』や『短期間で 幹を太らせる技術』の発達が目立ち始めました。

花の美しさを愛でるよりも、いかに高価な皐月を作ることができるかに
焦点があてられるようになったのです。
当時まだ20代だった私も例外ではなく、その風潮にのり
競うように皐月の販売に励みました。

そのうち皐月も
『国風賞』を獲るまでになり
盆栽の世界での地位を確立しました。

けれど皐月がメジャー化するということは、その多様化につながる・・・
ということを意味していました。
気が付けば太い木は珍しくなくなり、愛好家の好みが分かれ
技術的に初心者の方ではいきなり手を出せないところまできている
と感じるようになりました。

驚く早さで最新花が誕生し、そのどれもが独特な個性を持ち、無論美しく。
私もお客様の要望から、最新花を次々と仕入れ取り扱うようになりました。

ある時、大分の同業者の方が来店されました。
「うちの花季展は花をきれいに咲かせている木じゃないと
どんなに木がよくても飾らせん。」


・・・衝撃でした。
  
皐月の花季展ならば当然なこと。
見た目の格好良さばかり頭にあり、そんな基本的なことさえ
忘れていたのだと考えさせられました。

そして昔、鹿沼の同業者さんに言われたことを思い出しました。
「花を満足に咲かせることのできる人は、盆栽も作れる。」

私は今更になって
『満足に咲かせる』ことの意味を考えるようになりました。

今年の花季展で、お客様の出品された樹高1mもある『君子』が
下から天まで同じ大きさの花を見事に咲かせているのを見て
驚いたと共に頭の下がる思いでした。

考えてみれば私がお客様を指導していると同時に
お客様の作品によって勉強させていただいてたのだな
ということに気が付きました。

皐月を形良く、しかも花を最大限に美しく咲かせるということは
とても
高度な技術とセンスが必要なのです。
『皐月』を通して愛好家のお客様たちから、学んだことは少なくありません。

しかし、そのように支えてくださっていたお客様たちも
近年は多くの方が歳をとられて
鉢の植え替えすらままならなく なってこられ・・・

足を運んでくださる方も、不況と共に明らかに
減ったことを痛感するようになりました。


ですから
このHPを立ち上げること
少しでも皐月の素晴らしさを
今から皐月を始めたいという若い方たちから
足を運ぶことができなくなったお客様たちにまで発信できたら
・・・と考えたのです。


『花に始まり、花に終わる。』
ただ咲かせるではなく、見た人に『やはり皐月は美しい!』
と説得できるような、
花物作りをこれからも目指したいと思います。


応援してくださる皆様に感謝しつつ、自身がこれからも
皐月界の繁栄に少しでも貢献できることを祈って。

2007年9月
園主   長野 嗣 (ナガノ アキラ)